10/02/2516回目の本気

Ironbound / Overkill

スラッシュが下火となった90年代以降もコンスタントに作品を出し続けていた古豪NYスラッシャーOverkill。
16th「Ironbound」は、時代がいよいよスラッシュ再燃に到来した昨今、「この時の為に今までやってきたんだぜ」といわんばかりの傑作となった。

D.Dのベースを要としたOverkill特有のスラッシュグルーヴは爽快も爽快。スティーヴ"ゼトロ"サウザを思わせるBlitzのボーカルも相まってExodusの3rdに肉薄する内容、と随分ハードルを上げた感じですが、ロックンロールのドライヴ感とギターオリエンテッドなヘヴィメタルの綺羅びやかな要素がせめぎ合う本作の前に、涎を撒き散らしながらヘドバンに講じてしまうのは致し方ない。

泣きを備えた英国風な楽曲からスタンダードなスラッシュチューン、グルーヴィなロックンロールまで、曲は多彩ながらもスラッシュとしてカッチリまとめあがっているのは流石。
キングだし今年のスラドミは決まりでしょう!

#Ironbound

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10/02/24汚さの魅力

Snakes For The Divine / High On Fire

"疾いドゥーム・メタル"という矛盾をなんの違和感もなく整合させた3rd「Blessed Black Wings」で衝撃を受けて以来、雑食な僕でもHigh On Fireは溺愛バンドの一つであり続けた。

Motorheadのやさぐれ感、Sabbathのプリミティブなヘヴィサウンド、Venomの攻撃性というこれ以上望めない"汚さ"の魅力が3拍子揃った超理想的なこのバンドに、もはや死角はない。
3年ぶり5th「Snakes For The Divine」では幾分増量されたメロディがNWOBHMから続く伝統的ヘヴィメタルへの忠誠を感じさせつつも、三者が織り成す不潔感いっぱいの演奏は何も変わってない。"無骨"とか"粗野"とかいう言葉が全くもって似つかわしい。

メロディと曲展開に重きを置いたであろう楽曲からは、百戦錬磨の成熟と余裕を感じさせ、奇しくもそれは昨年のHeaven & Hell「The Devil You Know」との共通点を見い出す事ができる。
プロデューサーには「またかよ」と突っ込みたくなる程引っ張りだこのグレッグ・フィデルマン。アルビニばりにドラムを特徴づける音作りは賛否両論かもしれない。スラッシュチューンの#4 Ghost Neckでそれは顕著に現れる。

全体的には過去作と比べてドライヴ感は減少、メタル度はアップといった感じだ。ただ、High On Fireにしか出せない音。単独来日祈願!

#Snakes For The Divine

#Frost Hammer

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09/12/02神話完結 -エメンテト・レ-

Emehntehtt-Re / Magma

コンタルコスとは人の名前であり、"コンタルコス・アンテリア"は彼の青年時代の苦悩と運命を描いた1連の絵画のような音楽である。やがて自らの天命を知った覚者コンタルコスは古代エジプトの大導師エメンテト・レの墓に入りある秘密を伝授される。

去る5月のMAGMA来日公演で全編披露されたコンタルコス・ストーリー完結編「エメンテト・レ」。そのスタジオ盤ついにリリース!
70年代から、いくつもの音源で断片的に発掘された「エメンテト・レ」の欠片。その全貌が本作にて明らかにされる。

プタハ神を巡る覚者コンタルコスの壮大なストーリーと、それに相対するクリスチャン・ヴァンデの精神世界。MAGMAの音楽を紐解くにはまだまだ時間がかかるが、ここでは本作「エメンテト・レ」が発する音楽についてのみ語ることにする。
というのも、他の追随を許さない、否、もはや他とは別次元に位置するこの音楽に、僕はまた打ちのめされたからだ。

「エメンテト・レ」には、Kohntarkosz - K.A.と続く組曲の続編だけあって、複雑に展開するパートの中にもそれらのフレーズが度々垣間見れる。Kohntarkosz、De Futura...その中でもキーだと感じるのがHhaiの一節。
#2 Emehntehtt-Re IIでのクリスチャンによるボーカルから、電撃的なフィルインと同時に入り込むこのメインフレーズ、あまりの感動に涙が出てきた。
重厚なコバイア・コーラスで描かれる光と闇のシンフォニックな情景はHhaiで感じるそれと似ている。

ただし、本作は完成された組曲であるという事を忘れてはいけない。
神秘的なピアノの旋律、コバイア語の美しい語感、縦横無尽に広がるベース、そして宇宙との交信をはかる強烈なドラミング、全てが一丸となって、壮大なオーケストレーションへと昇華させた、MAGMAの新たなる大傑作となっている。

本作は"Kohntarkosz"などに比べても音の分離が完璧に成されていて、それぞれの楽器が独立したリズムを作り出している事が分かる。
付属の1万字を超えるクリスチャンのインタビューでは、"シンコベーション"や拍子とリズムの不一致についても言及していて興味深い。そのあたりを意識してみるとMAGMAが生み出す巨大なグルーヴの真相が見えてこない気がしないでもない。

一触即発の緊張感を生み出す演奏、聴き手のイマジネーションを無限に広げる至宝の楽曲。
未完として約30年間保管されていたとはいえ、結果的に再構築に近い形で完成を見た「エメンテト・レ」は、今現代でもクリスチャンはじめZeuhlの面々が稀代の音楽家として君臨していることを証明している。ハマタイ!

Seventh Records MAGMA "Emehntehtt-Re"

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